不動産を相続する際には、遺言書の確認、相続人の確定、財産分割の協議、名義変更など、さまざまな手続きが必要になります。しかし、相続発生後に初めてその流れを知ると、手続きの多さに戸惑うことも少なくありません。

本記事では、不動産相続をスムーズに進めるために押さえておきたい基本の流れと重要なポイントを解説します。相続手続きで迷わないために、ぜひ事前に知識を深め、準備を進めましょう。

不動産相続の基本的な流れ|スムーズに進めるためのポイント

不動産の相続が発生した際、適切な手続きを踏むことでスムーズに進めることができます。以下の流れに沿って、ポイントを押さえながら進めましょう。

① 遺言書の確認

相続の第一歩は、遺言書の有無を確認することです。遺言書がある場合、その内容が相続の基本方針となります。遺言書が見つからない場合は、法定相続人を確定し、法律に基づいて遺産を分配することになります。

遺言書の種類と特徴

種類 作成方法 保管場所 検認手続き
自筆証書遺言 遺言者本人が手書きで作成・押印 遺言者が自己管理 or 法務局で保管可能 必要
公正証書遺言 公証人が遺言者の意思を聴取し作成 公証役場に保管 不要
秘密証書遺言 遺言者が作成し、公証役場で封印 公証役場で保管 必要

遺言書の種類によって手続きが異なるため、遺言書が見つかった場合は内容をよく確認しましょう。

② 相続財産の把握

不動産や預貯金、ローンなどの財産内容を正確に把握することが重要です。不動産に関しては、固定資産税の納税通知書や登記簿謄本を確認し、対象となる物件を明確にしましょう。あわせて、負債があるかどうかも確認し、相続するリスクを把握しておくことが大切です。

③ 遺産分割協議

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分配方法を決定します。協議がまとまったら「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員の署名・押印を行います。万が一、合意に至らない場合は、家庭裁判所での調停を利用する方法もあります。

④ 不動産の名義変更(相続登記)

不動産の相続が決定したら、**相続登記(名義変更)**を行い、新しい所有者を登記します。2024年4月からは相続登記の申請が義務化され、期限内に手続きを行わないと罰則(10万円以下の過料)が科される可能性があるため、早めの対応が求められます。

⑤ 相続税の申告と納付

相続した不動産の価値が**基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)**を超える場合、相続税の申告が必要です。相続税の申告・納付期限は、被相続人の死亡から10か月以内と定められていますので、忘れずに手続きを行いましょう。

不動産相続の重要ポイント|スムーズに進めるためのチェックリスト

不動産相続を円滑に進めるためには、事前に重要なポイントを把握しておくことが大切です。ここでは、相続人が複数いる場合の財産分割の方法や、不動産の適正な評価、税負担の軽減策などを詳しく解説します。

① 相続人が複数いる場合の財産分割

相続人が複数いる場合、不動産をどのように分割するかが重要なポイントとなります。分割方法には以下の4つがあり、それぞれメリット・デメリットを理解した上で選択する必要があります。

現物分割:不動産をそのまま相続する方法。ただし、相続人間で公平に分けるのが難しい。
代償分割:特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法。資金の準備が必要。
換価分割:不動産を売却し、売却代金を相続人間で分割する方法。市場価格に左右される点に注意。
共有名義:相続人全員で共有する方法。ただし、将来的なトラブルを招く可能性がある。

相続人同士でしっかりと話し合い、最適な方法を選択することが重要です。

② 不動産の適正な評価

相続税の計算や遺産分割において、不動産の適正な価値を把握することが欠かせません。評価方法には以下のようなものがあります。

相続税評価額:国税庁が定めた基準で算出される評価額。
実勢価格:実際の不動産市場での取引価格。
公示価格:国が公表する標準的な土地の価格。
固定資産税評価額:市町村が課税のために設定する評価額。

これらの価格を比較し、適正な評価を行うことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

③ 相続登記の費用負担

不動産の相続登記には、登録免許税の納付が必要です。この税額は、固定資産税評価額×0.4%(2024年4月以降は相続登記が義務化)で計算されます。

また、登記手続きを司法書士に依頼する場合、手数料が発生するため、事前に費用を確認しておきましょう。

④ 相続する不動産の種類に応じた対応

相続する不動産の種類によって、管理や維持費が異なります。

土地のみ:固定資産税が発生し、活用方法を考える必要あり。
一戸建て:老朽化や修繕費用がかかる可能性あり。
マンション:管理費や修繕積立金の負担が発生。

将来的な負担を考慮し、管理・運用の方法を検討しましょう。

⑤ 各種制度を活用した相続税対策

相続が発生してからでは単に手続きを進めるだけで実質的には相続税対策はできません。やはり対策は生前の元気なうちにやっておくことをお薦めいたします。また財産を引き継ぐため様々な制度があります。その制度を活用するためにも元気な今のうちから検討することが大切です。

不動産相続で困ったら専門家に相談を

不動産相続は、法律や税制、手続きの煩雑さなど、専門知識が求められる場面が多々あります。また、相続人間の感情的な対立が生じるケースも少なくありません。

スムーズな相続を進めるためには、専門家のサポートを受けることが有効です。当社には相続支援コンサルタントの有資格者が多数在籍しております。相続手続きの不安を解消し、円満に進めるためにも、ぜひ当社へご相談ください。